元プロフットサル選手からYoutuberまでが一同に集結
“突撃”から生まれたFUTSAL HEROSが、観客と選手の心を揺さぶるまで
2022年7月30日、大阪府堺市大浜体育館小アリーナにてFUTSAL HEROSは初のイベントを開催、観客動員は約400人と華々しいスタートを切った。
この一日に向けて、名だたる出場選手はもちろん、運営スタッフ、そして来場するファン・サポーターを取りまとめたのは、一般社団法人アスリートヒーローズにて代表を務める牟田口勇人だ。
イベント終了後、そこで得た手応えや今後の展望について本人に迫った。
プレーする人の幅を広げることで、見に来る人の幅を広げる
―最初に、今回のイベントでの実施内容を改めて教えてください。
今回は午前・午後と大きく2つに分けてイベントを実施しました。午前は「ヒーローズジュニアカップ」と題して、事前にお申込みいただいたお子様を対象に、このイベントのために集結したFUTSAL HEROSの皆さんと対戦をしていただきました。そして午後は、同じピッチでHEROS同士のエキシビジョンマッチ。EASTとWESTに分かれて真剣勝負を行い、ご来場いただいた皆さんにプロならではの技術や勝負の行方を楽しんでいただきました。
―FUTSAL HEROSとして来場した選手たちの顔ぶれが、バラエティに富んでいたのが印象的でした。
あえて色々な選手を交えた構成にしたのは私自身の狙いでもありました。今回来ていただいた選手の中には、今も競技チームなどで活動している人もいましたが、あえて既存のチームではなくて“この日のために結成した団体”で戦ってもらう。そうすることで、見る人の属性にも広がりが出てくると考えたんです。
今のフットサルって、やる人以上に見る人が決まりきってしまっているような状態です。これまでフットサル観戦に馴染みが無かった人にも来てもらい裾野を広げるには、まずプレーする人の幅を広げていこうと考えました。
―それにしてもHEROSには、フットサル日本代表として活躍したようなプレーヤーもいれば、地域リーグで活動するインフルエンサー、サッカーのジャンルでは抜群の知名度を持つYoutuberもいらっしゃいました。こんな人脈はどこから…?
人脈も何も、うち8割ほどはDM(SNSのダイレクトメッセージ)で突撃を仕掛けました。「こういうイベントをやるんですけど、来てもらえませんか?」と。行き当たりばったりであるあまりに、ここだけの話、最初に想定していたメンバーとはだいぶ異なる顔ぶれになりましたね(笑)でもそれもこのイベントの良さというか…公式のリーグのように、何週間も前から登録手続きがあったりその承認が必要だったりというわけではありませんから、そのフレキシブルさが叶えた豪華な布陣だったのかなと。
「舞台さえあれば誰でも活躍できる」という実感
―イベントを実施してみて、どんな手応えを得ましたか?
1つ印象的だったのは、エキシビジョンマッチでの得点者に、バリバリのフットサラーだけでなくYoutuberの梅ちゃんやtatsuyaさんも名を連ねていたことです。今回既存の公式戦には無いようなルールも取り入れ、「舞台さえあれば誰でも活躍できる」ということを示したかったのですが、本当にその通りとなりました。
―試合後のSNSも盛り上がっていましたね!
はい、出場した選手が試合後にSNSで発信してくれたことはもちろん、それに他の選手がコメントをつけて盛り上がっていたことも嬉しかったです。スポーツ選手ってなかなか発信しないと言われることがありますが、正直なところ、発信できる人たちは全国に散らばっている。その人たちを表舞台に出してあげるというか、出られる舞台を用意してこそ、発信も活性化するはずなんです。
―ファン・サポーターも喜んでくれていたんじゃないですか?
ありがたいことに嬉しい声をたくさんいただきました。「めちゃ良かったのでまた開催してほしい」という声や、「グッズがプロみたいに多かった」といったコメントもいただきました。
―そう言われてみるとイベント限定グッズが豊富に揃っていましたね。
私が今年立ち上げたブランド「FOOTCROWN」で、選手名の入ったユニフォームを製作した他、タオルやコインケース、キーホルダーといった小物類も充実させました。実はユニフォームだけで90着ほど販売できました!スポーツ界に限ったことではありませんが、ファンビジネスってすごく大きな力を持っていると思っています。ファンがその対象に持つ愛情や「同じものを身につけたい」「何か普段も使えるものを買いたい」といった思いに、きちんと応えてあげることがいかに重要かを実感しました。
―90着とはすごい数ですね。選手もそれだけ自分のユニフォームを着てもらえるのは嬉しいですし。
そもそも選手の中には「人生初の名前入りユニフォーム」という人もいて、とても喜んでくれました。あとは人前でプレーできたことで「子どもの頃の夢がかないました」と言ってくれたYoutuberもいましたね。
納得できるマネタイズを追求しながら、他地域へ拡大したい
―大盛況に終わった今回ですが、今後に向けてはどういった展望を思い描いていますか?
一つはマネタイズの部分をいっそう精査していきたいです。
今回はあえてチケットを無料にして間口を広げ、収益はグッズとスポンサーで成り立たせました。ただ実際にHEROSとして来てくださった選手たちの顔ぶれを思い返すと、チケット代金を普通に取ってもいいのかもしれない。果たしてそれはいくらなのか?既存のリーグに倣うことは簡単ですが、新しくやることだからこそ、「観戦・体験にどうお金を払ってもらって、何をどう還元するか」すなわち納得できるマネタイズを追求していきたいと考えているんです。
―何か課題に感じていることはありますか?
特に難しいと感じているのは、あえて厳しいルールを取っ払った分「体育館の規定を満たせば何でもできてしまう」という側面があります。これは当然良さでもありますし、悪さというと少し違いますが、「HEROSとして何をどこまでやるのか」という悩みに迷宮入りしそうになるというか(苦笑)。
先ほどの話に戻りますが、スポンサーさんにしてもファン・サポーターにしても、何に払ってもらって何をしてどう還すか、というところはこれから練らないといけない部分です。
―既に次のイベントは計画中なんでしょうか?
まだ発表はできませんが、年内に開催します!
それに限らず、元プロ選手が試合をしに来てくれるというところには他の地域からも関心の声を頂いていて、あとは今回参加した人が次の候補を紹介してくれるというケースも生まれています。FUTSAL HEROSとして様々な地域を回って、フットサルというスポーツの盛り上げを一端でも担えたら嬉しいですね。
インタビュアー/河合 萌花